「うちの子は人前で話すことが苦手」「販売なんて、まだ早いのでは」「売れなかったら傷つくかもしれない」。子どものお店屋さん体験に興味があっても、不安を感じる保護者は少なくありません。
しかし、子どもの販売体験で得られるものは、売上だけではありません。
商品を考え、準備し、お客さんへ届ける過程そのものが学びになります。
さらに、接客や会計、販売後の振り返りを通して、伝える力やお金への理解も深まります。
自分の作品を選んでもらう経験は、「自分にもできた」という自信にもつながるでしょう。
この記事では、販売前・販売中・販売後に分けて、子どもがお店屋さんを経験すると何が変わるのかを紹介します。
放課後に、社会とつながる。全国の仲間や、第一線で働く社会人・プロとの出会いが、子どもの世界を広げます。
NIJIN放課後プロジェクトスクールを見る ▶01販売前に育つ「考える力」
「何を売ろう?」から学びが始まる
販売体験は、マルシェ当日だけの活動ではありません。
最初の学びは、「何を売ろうかな」と考え始める瞬間にあります。
絵を描くことに夢中な子がいます。
また、アクセサリー作りを楽しむ子もいるでしょう。
ゲーム制作が得意な場合もあります。
さらに、人を楽しませる企画が好きな子もいます。
何を販売するか考えるためには、まず自分の好きなことや得意なことを振り返る必要があります。
つまり、お店を考えることは、自分自身を知る活動でもあるのです。
正解がないから自分で決められる
学校では、正しい答えを見つける問題に取り組む場面が多くあります。
一方で、マルシェの出店内容に、決められた正解はありません。
作品を販売する
レジン、アクセサリー、イラスト、しおりなどを商品にします。
ゲームを提供する
スクラッチゲームやマイクラ建築を、体験型のお店にできます。
遊びを企画する
くじ引き、クイズ、工作、ミニゲームなども出店内容になります。
自分がやってみたいことを選び、形にする経験が、主体性につながります。
準備を通して計画する力が育つ
販売する内容が決まると、次は準備が始まります。
- 商品を何個作るか
- 材料はどれくらい必要か
- いつまでに準備するか
- 値段をいくらにするか
- 看板や値札をどう作るか
やることを整理し、期限までに進めるためには、計画が必要です。
途中で予定どおりに進まない場合は、商品の数を減らしたり、作り方を変えたりします。
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02「誰かのため」を考えられるようになる
自分が作りたいものから一歩進む
家で作品を作るときは、自分が作りたいものを自由に作れます。
もちろん、その時間にも大きな価値があります。
しかし、販売を考えると、視点が少し変わります。
どのような人が買ってくれるかな。
小さな子どもにも使えるかな。
プレゼントに選んでもらえるかな。
どのような色なら喜ばれるかな。
このように、商品を受け取る相手について考えるようになります。
相手の立場を想像する力
お客さんに選んでもらうためには、使う人の立場を考える必要があります。
たとえば、小さな子ども向けの商品であれば、安全性や使いやすさも大切です。
大人向けの商品なら、普段使いやすい色やデザインを考えることもできます。
また、ゲーム体験を提供する場合は、初めて遊ぶ人にもルールが伝わるかを考えます。
思いやりが具体的な行動になる
学校や家庭で、「相手の気持ちを考えよう」と伝えることはあります。
ただ、言葉で教えられるだけでは、具体的に何をすればよいか分かりにくいこともあります。
販売体験では、お客さんに喜んでもらうという目的があります。
そのため、相手を考えることが、商品のデザインや説明、値段などの具体的な行動につながります。
03販売中に育つ「伝える力」
最初は緊張しても大丈夫
マルシェ当日、初めて会うお客さんを前にすると、多くの子どもが緊張します。
大きな声が出ないこともあります。
目を合わせることが難しい場合もあるでしょう。
しかし、最初から上手に接客する必要はありません。
まずは、商品を渡す、値段を伝える、あいさつをするなど、できることから始めます。
好きなことなら自然に話せることがある
普段は自分から話すことが少ない子どもでも、好きなことについては詳しく説明できる場合があります。
これは自分で描いた絵です。
この色の組み合わせを工夫しました。
このゲームは3分くらいで遊べます。
ここを押すと、キャラクターが動きます。
自分の作品が会話のきっかけになるため、何もない状態で話すよりも、人と関わりやすくなります。
伝える方法は話すことだけではない
人前で話すことが苦手な場合は、説明カードや看板を使えます。
商品の特徴や使い方を文字で伝える方法もあります。
さらに、友達と一緒に説明したり、最初は保護者に補足してもらったりすることもできます。
04「ありがとう」が子どもを変える
家族以外の人から認めてもらう
家族から「上手だね」「かわいいね」と言ってもらうことは、子どもに安心感を与えます。
一方で、初めて会った人が商品を選び、「これが欲しい」と言ってくれる経験には、別の価値があります。
自分の好きなことや得意なことが、家庭の外でも認められたと感じられるからです。
「ありがとう」は行動の価値を伝える
商品を渡したとき、お客さんから「ありがとう」と言われます。
ゲームを体験した人が、「楽しかった」と伝えてくれることもあります。
その言葉は、上手か下手かを評価するだけの言葉ではありません。
自分の行動が、誰かの喜びにつながったことを伝える言葉です。
小さな成功を見つける
すべての商品が売れなくても、販売体験の価値はなくなりません。
- 一人のお客さんへ説明できた
- 袋に商品を入れて渡せた
- 最後まで自分の役割を続けられた
こうした小さな成功を見つけることが大切です。
05お金の価値を体験で学べる
お金が動く理由を体験する
子どもにとって、お金は大人からもらい、お店で使うものになりがちです。
販売体験では、自分の商品やサービスを相手に届け、その対価としてお金を受け取ります。
つまり、誰かに価値を届けた結果として、お金が動くことを体験できます。
売上と利益の違いを知る
商品が1,000円売れても、1,000円すべてが利益になるわけではありません。
商品を作るためには、材料費がかかります。
材料費
商品を作るために使った材料や道具の費用です。
売上
商品やサービスを販売して受け取った金額です。
利益
売上から材料費などを引いた後に残る金額です。
たとえば、材料費に600円かかり、商品が1,000円売れた場合、利益は400円です。
実際の商品を使って考えるため、算数の計算が自分ごとになります。
計算が苦手でも工夫できる
おつりの計算が苦手な場合は、100円単位の価格に設定できます。
電卓やおつり表を使っても構いません。
また、友達や大人と一緒に会計を担当する方法もあります。
06販売後に育つ「振り返る力」
売上だけで評価しない
マルシェが終わると、何個売れたか、いくらになったかに目が向きやすくなります。
もちろん、売上を確認することも大切です。
しかし、販売体験の成果は、金額だけでは測れません。
- 自分からお客さんにあいさつできた
- 商品の説明を一度でもできた
- 困ったときに助けを求められた
- 友達と役割を分担できた
- 最後までお店に関われた
その子にとって、どのような挑戦があったかを見つけることが大切です。
うまくいった理由を考える
よく売れた商品があれば、なぜ選んでもらえたのかを考えます。
色や形が目立っていたのかもしれません。
値段が分かりやすかった可能性もあります。
また、商品の説明が伝わりやすかったことも考えられます。
次の挑戦につなげる
振り返りをすると、「次はこうしたい」という気持ちが生まれます。
次は商品をもう少し増やしたい。
看板を大きくしてみたい。
値段を分かりやすくしたい。
違うゲームも作ってみたい。
一度の体験で終わらず、次の活動へつながることも、販売体験の大きな価値です。
07販売体験は「小さな社会」
一つのお店に多くの役割がある
お店を運営するためには、商品を作る人だけでなく、さまざまな役割が必要です。
すべてを一人で行う必要はありません。
友達と役割を分けることで、お互いの得意なことを活かせます。
失敗してもやり直せる
社会では、計画どおりに進まないことがあります。
商品が思うように売れないこともあるでしょう。
お客さんにうまく説明できない場合もあります。
しかし、一度うまくいかなかったからといって、すべてが終わるわけではありません。
原因を考え、方法を変えて、もう一度試せます。
社会の中で自分の役割を知る
販売体験では、子どもが誰かに用意された活動へ参加するだけではありません。
自分のお店や役割を持ち、社会の一員として人と関わります。
こうした一連の経験が、社会の中で生きる力につながります。
08保護者は「教える人」より「応援する人」へ
大人が正解を決めすぎない
販売の準備を見ていると、保護者は「こちらの方が売れそう」「この値段がいい」と伝えたくなるかもしれません。
もちろん、安全面や材料の準備など、大人の支援が必要な部分もあります。
一方で、商品や価格、並べ方をすべて大人が決めると、本人が考える機会は少なくなります。
問いかけながら支える
どちらの方法がやりやすそう?
誰に買ってもらいたい?
困っていることは何かな?
誰かに手伝ってもらう?
答えをすぐに教えるのではなく、本人が考えられるように問いかけます。
迷っている場合は、選択肢を少なくして示すと決めやすくなります。
結果より挑戦した過程を見る
売上が少なくても、挑戦したことに価値があります。
緊張しながら店頭に立った。
友達と相談できた。
失敗しても、もう一度やってみた。
保護者がその過程を見つけて言葉にすることで、次の挑戦につながります。
09お店屋さん体験を始めてみませんか?
最初から完璧なお店でなくていい
商品を何十個も用意する必要はありません。
まずは、一つの作品や、一つのゲーム体験から始められます。
一人で接客することが難しければ、友達や大人と一緒でも構いません。
子どもに合った役割から参加できる
マルシェには、販売以外にも多くの役割があります。
看板づくりや商品の袋詰め、会計の記録などから参加する方法もあります。
その子の得意なことや負担の少ない方法を選ぶことが大切です。
販売体験の目的は、たくさん売ることだけではありません。
自分で考え、人と関わり、結果を受け止めることに価値があります。
小さなお店屋さん体験が、子どもの新しい一歩につながるかもしれません。
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